広告代理店を目指す就活生におすすめの本②:「空気の作り方」
1.執筆者について
池田純(いけだ・じゅん)
⇒北海道出身で、小学校3年時に親の転勤で横浜市に転居。早稲田大学を卒業後、住友商事、博報堂と二度の転職を経験したあと、2007年にDeNAに入社。
2009年に執行役員となり、2010年にNTTドコモとの合弁会社「エブリスタ」の代表取締役として活躍。
さらに、2011年、東京放送ホールディングスが保有していたプロ野球球団「横浜ベイスターズ」をDeNAが買収したことに伴って、球団代表取締役社長に抜擢される。
2011年当時20億円の赤字球団だった横浜ベイスターズを5年間で、黒字球団に押し上げた立役者としてテレビ出演や本の出版を行っています。
任期満了に伴い、昨年10月に球団を離れることとなり、現在は日本プロサッカーリーグの特任理事に就任しています。
2.ざっくり言うと
(1)感性・直感・ひらめきの前提として「データ分析」が必要
(2)組織は、「結果」で束ねるしかない
3.広告代理店を目指す就活生にとって重要なポイント
(1)横浜ベイスターズを救った「データ分析」
池田さんは、著書の中で以下のように述べています。
※以下引用
たとえばベイスターズにおいては、私はある時期、球団HPのDAU(Daily Active Users=1日にHPにアクセスしたユニークユーザー数)をもっとも重要な指標としていました。
あらゆるデータを見続けた結果、その数字に軸を置いてモノゴトを見渡していけば、ファンの空気が感じ取れ、チケットの売れ行きもおおよその予測がつくということを確信できたからです。
一年前の同じ時期に比べてDAUが下がっているとしたら、ファンの空気が冷えてきた証拠であり、イベントや緊急補強の発表をしてファンの心に再度火を灯(とも)す必要があるというサインです。もっとも参考にすべきデータを理解するということは、すなわち、状況に応じた適切な戦略や戦術の実行に直結します。
言い換えれば、KPIは会社の空気を元気にし続けるためにもっとも重要な数値でもあります。その見極めを誤ると、会社を間違った方向へ誘(いざな)い、社員に間違った作業をさせてしまうことになります。
また、数字だけに目を奪われた上司が、思ったような数字が出ないことに焦りを感じ、その原因の分析報告を求める→部下はその対応に追われる、といった悪循環に陥ることもしばしばです。いくら分析しても、数字だけではわからないことは必ずあります。
KPIの見定めを誤ったり、数字にとらわれたりすると、仕事を不毛なものにしてしまい、新しい価値を生み出し顧客に提供するという本質から遠のいてしまいます。
池田さんは、データ分析を行う上で「分析のための分析をしない」ということを掲げているといいます。
ITが進歩した現代では、ユーザーのあらゆるデータを取得することが容易になりました。
「データ」は、分析することで商品やサービスを、よりよい方向に導いてくれます。
しかし、同時に「データ」は、商品やサービスを破壊する力も持っています。
なぜなら、数値に囚われて商品やサービスの本質、顧客のニーズを無視した方向性に進んでしまう可能性を秘めているからです。
池田さんは、あくまでも発想やアイデアの前提としてデータを用いることで、数値との正しい距離感を保ってデータを球団経営に活かしています。
(2)組織は「結果」で束ねるしかない
池田さんは、球団経営を行う中で「結果で示すこと」を大切にしているといいます。
それは、池田さんがDeNA本社からベイスターズの社長に異動した時の経験からだと本書では述べられています。
当時池田さんがベイスターズのトップに立った時、本社から来た人間は、池田さん含めて3人。
それ以外の約200人の社員は、DeNAとは何ら関係のない旧体制の社員でした。
彼らからは、「プロ野球業界は特殊だ。あなた、本当に社長をやれると思ってるんですか?」などの批判的な意見も多かったといいます。
彼らをまとめるために池田さんが掲げたのは、「結果を出すこと」でした。
彼は、ベイスターズのHPアクセス数や、来場者数など、その時時に合わせてKPIを設定し、社員たちに周知させることで、目標を追う感覚、達成する感覚を染み込ませていったのです。
その結果、20億円の赤字体質だったベイスターズは、5年後に球団1、2位を争う利益の高い球団になったのです。
4.まとめ
ここまで池田さんの著書「空気の作り方」について説明してきましたが、
いかがだったでしょうか。
分析の考え方、組織の考え方は、広告代理店を目指す就活生にとっても大切な教訓だと思います。